各レイヤーでの動作
STANAG 7221では、OSI参照モデルのレイヤー1~4のPHYレイヤー、データ・リンク・レイヤー、ネットワーク・レイヤー、 トランスポート・レイヤーに相当するレイヤーが下図のように定義されています。 各レイヤーでの動作について以降で説明します。
各レイヤーの定義
物理(PHY)レイヤー
物理(PHY)レイヤーは、電気的、および、機械的レベルでネットワークを介してビット・ストリームを伝送します。 これは、ケーブル、信号、シグナリング・プロトコル、および、物理的な定義を含み、 キャリア上でデータを送受信する手段を提供します。
物理(PHY)レイヤーには以下の一般的な特徴があります
- コンフィグレーション可能な帯域幅
- 最大512個のトーン、8つのサブバンド
- 有効なネットワーク構成は、1~8の連続したサブバンドを使用
- 0~80 MHzの間にある最大40 MHzの帯域幅
- STANAG 7221 Annexは、25~65 MHz帯域幅のみサポート
- トーン間隔は78.125 kHz
- 同期時分割多元接続(TDMA)通信
フレーム構造
下図に物理(PHY)フレームの構造を示します。
PHYフレーム構造
フレームは、Preamble(5×同期シグナル)、Frame Control、Frame Payloadで構成されます。 各ターミナルは、Preambleを受信することでフレームの開始を検出します。 次にFrame Controlの内容に応じて該当するターミナルが応答を返す仕組みです。 ここでは、2つの通信変調方式BR(BasicRate)/VBR(Variable Bit Rate)が定義されています。
- BR(Basic Rate)
- 全てのターミナルが認識できるBPSK(Binary Phase)変調方式
- フレーム・コントロール、ネットワークの起動、など
- ダイバーシティ値の設定により通信速度が異なる ダイバーシティ値:1 = 14.8Mbps、2 = 7.4Mbps、4 = 3.6Mbps、8 = 1.8Mbps(ディフォルト) 「8」の場合、8つのサブバンド全てに同じデータを送信することを意味し堅牢性が高い
- VBR(Variable Bit Rate)
- トレーニングを行い、各トーンに最適なビット・ローディングが決定された後に使用される変調方式
- 100 Mbpsの通信速度を実現するには、VBRの使用が必須
MACレイヤー
MACレイヤーは、各ターミナルのアドレス適用、フレーム管理、バス・トレーニング、バス・スケジュール管理(複合トランザクション)などの STANAG 7221の基幹部分を処理するレイヤーです。
フレーム構造
下図にMACフレームの構造を示します。ただし、Preambleは、前述の物理(PHY)レイヤーで付加されます。 フレーム構造は、PHYレイヤーと同じですがより詳細まで定義されています。 Frame Controlは、以下に示すようにフレーム内容を定義しさらにCRC16保護されています。 Frame Payloadは、データ、ゼロパディング、さらにCRC32保護されています。 データ部分は、Frameタイプに依存して各種のデータを入れることが可能です。
MACフレーム構造
- バス・コマンド・フレーム(BCF)
- ターミナル応答フレーム(TRF)
- ターミナル確認応答フレーム(TAF)
- MACマネージメント・フレーム(MMF)
- トレーニング・フレーム(TF)
- Arbitrary Test フレーム(ATF)
トレーニング
トレーニングは、トレーニング・ジェネレータにより生成された既知のデータ・パターンをブロードキャスト送信しバスの状態を観測する機能です。 トレーニング・ジェネレータは、PHYインターフェイス・ブロックと同じですが、上位のMACレイヤーからのデータ入力はありません。
受信側のターミナルは、受信信号の品質(SNR)測定し、これにより生成されるのが、トーンマップと呼ばれるテーブルです。 トーンマップには、各トーンに何Bit(1, 2, 4, 6, 8, 10, 12Bit)までの情報を入れることができるかが格納されています。 この結果は、MACマネージメント・フレーム受信時に、トーンマップ・データとして返信され、ターミナル間でこの情報が共有されます。
PHYレート:100 Mbpsで動作時のトーンマップの例を下図に示します。
トーンマップ
トレーニング周期は、ユーザーがバス・スケジュールとしてあらかじめ定義することが可能で(ディフォルト周期は3 Hz)、 ハードウェアによって自動的に実行されます。この機能は、VBR変調を使用する場合に必ず使用する必要があります。
複合トランザクション
1553Bでは、「コマンド - レスポンス」で1回のトランザクションが完結するが、STANAG 7221では、 複数のコマンドをまとめて送信する複合トランザクションと呼ばれる方式が使われています。 これは、通信を効率的に行い、高速化を図るための仕組みです。 フレーム間にはガード・スロットと呼ばれるギャップ時間が設けられており、これは、 各ターミナルの処理遅延に対応するためのものです。 また、この時間は、すべてのターミナルにおいて同一の設定が適用されます。
PALレイヤー
- PALは、ラベル・レイヤーとMACレイヤーとの間のインターフェイスを提供
- ラベル・レイヤーは、任意の長さのパケットを選択して送受信できるようにこのサブ・レイヤーは必要です
- セグメンテーションとリアセンブルを実行
- MACフレームが効率よくデータを転送できるようにデータサイズの調整を行う
ラベル・レイヤー
- VCE(Virtual Circuit Endpoint)の値に応じて各パケットにラベル・ヘッダを付加する
- VC(Virtual Circuit)…異なるターミナルのアプリケーション間での仮想接続
- VCE(Virtual Circuit Endpoint)…ターミナル間の仮想接続エンド・ポイント(アプリケーションが識別するため)
- Label …送信するパケットに付加される情報(VCE識別用)
- Queue … VCEが使用する入/出力キュー
- ターミナル間で、複数のVCをサポートするため、識別用にラベル番号、および、ラベル・レイヤーが実装されています
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