フォーマット
ワード・フォーマット
ARINCのデータ・ワードは、常に32ビットで、一般的に、5つの主要フィールド、すなわち、パリティ、SSM、データ、SDI、およびラベルを含む図3で示されるフォーマットを使用します。 ARINCの約束事は、1(LSB)~32(MSB)までのビットを数えます。
図3 一般的なARINCのワード・フォーマット
パリティ
MSBは、常にARINC 429用のパリティ・ビットです。パリティは、通常、特定の試験用を除き、奇数に設定されています。 奇数パリティは、32-bitワード内に奇数個の“1”ビットがなければならないことを意味し、パリティ・ビットをセット、またはクリアすることにより保証されます。 例えば、ビット1~31が偶数の“1”ビットを含む場合、ビット32は、ODDパリティを作り出すように設定する必要があります。 一方、ビット1~31が奇数の“1”ビットを含む場合、パリティ・ビットは、クリアされなければなりません。
SSM
ビット31と30は、Sign/Status Matrix、またはSSMを含みます。このフィールドは、ハードウェア機器の状態、動作モード、またはデータの内容の妥当性が含まれます。 適用可能なコードは、表4、および表5に示します。
ビット | 意味 | |
31 | 30 | |
0 | 0 | プラス、北、東、右、~へ、上 |
0 | 1 | 計算データなし |
1 | 0 | 機能試験 |
1 | 1 | マイナス、南、西、左、~から、下 |
データ
ビット29~11は、多くの異なるフォーマットとすることができるデータを含みます。いくつかの例は、後半のチュートリアルで提供されます。 様々なメーカーにより実施されてきた多くの非標準フォーマットも存在します。いくつかの場合、データ・フィールドは、SDIビットと重複します。この場合、SDIフィールドは使用されません。
SDI
ビット10と9は、送信元/宛先識別子、またはSDIを提供します。これは、データが予定される受信機を識別するために、複数の受信機用に使用されます。 送信元を識別するために、複数のシステムの場合でも使用することができます。いくつかの場合、これらのビットは、データ用に使用されます。 ARINC 429は、配線のペア上に1台の送信機だけを持っていますが、最大20台までの受信機を持つことができます。
ラベル
ビット8~1は、データ型とそれと関連したパラメータを識別するラベルを含みます。ラベルは、メッセージの重要な一部であり、以下でより詳細に説明します。 これは、残りのワードのデータ型、したがって、使用されるべきデータ翻訳の方法を決定するために使用されます。各種データ型は、以下で詳細に説明します。ラベルは、一般的に8進数として表現されます。
送信順序
ラベルを除く各バイトの最下位ビットは最初に送信され、ラベルは、各場合においてデータの前に送信されます。ARINCバス上を送信されるビットの順序は、以下の通りです。
8, 7, 6, 5, 4, 3, 2, 1, 9, 10, 11, 12, 13・・・32
注意: 32-bit ARINCワードがバス上に送信される時、ラベルの場合、最上位ビットが最初に送信されます。この逆順序の送信は、ARINCワードにおける他のビットの送信順序と対照的です。
ARINC 429データ型
全てのARINCデータは、32ビット・ワードで送信されます。データ型は、Binary Coded Decimal(BCD)、2の補数二進記法(BNR)、ディスクリート・データ、メンテナンス・データ、および到達確認、 およびISO Alphabet #5キャラクタ・データです。 最新バージョンにおいては、メッセージのビット指向パケットが、ファイルを転送するために使用できます。
BCDデータ・エンコーディング
BCD、または二進化十進法は、ARINC 429と他の多くのエンジニアリング・アプリケーションで見られる一般的なデータ・フォーマットです。 このフォーマットにおいては、4ビットが各十進ディジットに割り当てられます。 一般的なBCDメッセージを、図4に示します。そのデータ・フィールドは、5つのサブフィールドまでを含みます。 最上位サブフィールドは、その最大十進値が7となるように、ビットを含みます。 最大十進値が7より大きい場合、ビット29~27は、0で埋められ、2番目のサブフィールドが最上位になります。 図5の例のメッセージは、DME距離が25786で、正の符号を持つデータを伝達します。 特定の機器、数値スケール、および小数点の位置が、ラベルの機能であり、後で説明されます。
図4 一般的なBCDワード・フォーマット
図5 BCDワード・フォーマットの例
これは、現実よりも複雑なように思えるかも知れません。基本原則は、今日のコンピュータによって実行されるように、様式的な二進法数学です。 コンピュータ・プログラマは、BNRデータとサイン・ビットをプログラム変数にシフトし、標準的な数学的操作でこれらを直接操作することができます。
混合フォーマット
32ビット・メッセージ・ワードは、BCD、またはBNRデータと混在するか、または独立したメッセージとして、ディスクリート情報も含むことができます。 ワード内の未使用のビットは、データ・フィールドに到達するまで、Bit #11で始まる変数毎に1ビットが割り当てられてもよいです。ディスクリート・エンコード・ワードがない場合、未使用の位置は、ゼロで埋められます。
ディスクリート・データ・フォーマット
多数のARINC 429ワードは、完全にディスクリート専用です。これらは、参考文書3で説明されます。表6は、エンジン・データを送信するために使用されるワードを示します。
ビット | 機能 | 1 | 0 |
1 | ラベル 005 | X | X |
2 | ラベル 005 | X | |
3 | ラベル 005 | X | X |
4 | ラベル 005 | X | |
5 | ラベル 005 | X | |
6 | ラベル 005 | X | |
7 | ラベル 005 | X | |
8 | ラベル 005 | X | |
9 | SDI | ||
10 | SDI | ||
11 | PAD | X | |
12 | PAD | X | |
13 | シリアル・データ割込みクリア失敗 | Fail | Pass |
14 | ARINC受信失敗 | Fail | Pass |
15 | PROMチェックサム失敗 | Fail | Pass |
16 | ユーザRAM失敗 | Fail | Pass |
17 | NV RAMアドレス失敗 | Fail | Pass |
18 | NV RAMビット失敗 | Fail | Pass |
19 | RTC失敗 | Fail | Pass |
20 | マイクロプロセッサ失敗 | Fail | Pass |
21 | バッテリ低 | Fail | Pass |
22 | NV RAMビット破壊 | Fail | Pass |
23 | 未使用 | ||
24 | 未使用 | ||
25 | 未使用 | ||
26 | Interrogateアクティブ | ||
27 | 消去アクティブ | Activated | Non-Act |
28 | ビット・アクティブ | Activated | Non-Act |
29 | SSM | Activated | Non-Act |
30 | SSM | ||
31 | SSM | ||
32 | パリティ(奇数) |
メンテナンス・データ
ARINC 429は、メンテナンス・データと英数字メッセージの送信、および受信確認も規定します。これらの機能は、普通、メッセージのシーケンスの交換を含みます。 英数字メッセージは、ISO Alphabet No. 5を使用します。これらのメッセージ型は、チュートリアルの後半で説明されるビット指向プロトコルにより更新されています。更に情報が必要な場合、仕様を参照してください。
データ翻訳方法
送信できる各データ・アイテムは、ラベル・コードが割り当てられ、これらは、ARINC規格に記載されています。ラベルの例は、BCD用は表7に、BNR用は表8に示します。
ラベルは、複数の機器のタイプと関連付けることができます、例と関連した機器IDを、表9に示します。このように、BCDラベル010は、常に現緯度ですが、飛行管理コンピュータ、慣性参照システム、 またはADIRSの3つの異なるソースに関連することができます。BCDラベル014は、慣性参照システム、高度・方位参照システムからの磁気方位か、またはADIRSです。
ラベル | 機器ID (Hex) |
パラ メータ名 |
単位 | 範囲 スケール |
ディジット | + | Res | 最小 Tx速度 (ms) |
最大 Tx速度 (ms) |
001 | 002 | 現在地-緯度 | 度-分 | 180N~180S | 6 | N | 0.1 | 250 | 500 |
004 | 現在地-緯度 | 度-分 | 180N~180S | 6 | N | 0.1 | 250 | 500 | |
038 | 現在地-緯度 | 度-分 | 180N~180S | 6 | N | 0.1 | 250 | 500 | |
014 | 004 | 磁気方位 | 度 | 0~359.9 | 4 | 0.1 | 250 | 500 | |
005 | 磁気方位 | 度 | 0~359.9 | 4 | 0.1 | 250 | 500 | ||
038 | 磁気方位 | 度 | 0~359.9 | 4 | 0.1 | 250 | 500 |
ラベル | 機器ID (Hex) |
パラ メータ名 |
単位 | 範囲 スケール |
ビット | Res | 最小 Tx速度 (ms) |
最大 Tx速度 (ms) |
064 | 03C | タイヤ圧(機首) | psia | 1024 | 10 | 1.0 | 50 | 250 |
102 | 002 | 選択高度 | feet | 65536 | 16 | 1.0 | 100 | 200 |
020 | 選択高度 | feet | 65536 | 16 | 1.0 | 100 | 200 | |
029 | DC電流(バッテリ) | amps | 256 | 8 | 1.0 | 100 | 200 | |
0A1 | 選択高度 | feet | 65536 | 16 | 1.0 | 100 | 200 |
機器ID(Hex) | 機器型 |
002 | 飛行管理コンピュータ |
004 | 慣性参照システム |
005 | 高度・方位参照システム |
020 | DFSシステム |
029 | ADDCSとEICAS |
038 | ADIRS |
03C | タイヤ圧監視システム |
0A1 | FCC制御装置 |
表8において、BNRラベル064は、タイヤ圧監視システムからのノーズ・タイヤ圧です。BNRラベル102は、機器IDに応じて、高度、またはDC電流を選択することができます。 表7と表8は、測定単位、範囲、またはスケール、有効桁数(BCD)、またはビット(BNR)、分量の正負の判断、その分解能、最大、および最小転送間隔、およびいくつかのラベルに対して、最大転送遅延を識別するパラメータも示します。
一般的に、メッセージは、繰り返し送信されます。例えば、測定された対気速度は、センサーから100ms以上、または200ms超の間隔で計器に送信されます。 メッセージは、反復ワード・シーケンス、またはフレームでも送られることがあります。各燃料タンク・レベル・センサーからのメッセージは、シーケンスで送られ、その後、シーケンスは、指定した時間の後に繰り返されます。 データが適用される特定のデータ・ソースは、ラベル、またはSDIの何れかによって決定されます。
表10は、約1秒に1回送信されるラベル241を示します。示されたシーケンスは、左メイン・タンクで始まり、右、その後中央が続きます。 63ワード・シーケンスが完了すると、ワード1から再び繰り返します。データのほとんどは、BNRフォーマットですが、いくつかのワードは、BCDです。
ワード | 信号 | 単位 | 範囲 | 信号 ディジット |
分解能 | データ |
1 | 左メイン・タンク #1 | pF | 319.922 | 12 | .078125 | BNR |
2~13 | 左メイン・タンク #1~#13 | pF | 319.922 | 12 | .078125 | BNR |
14 | 左メイン・タンク #14 | pF | 319.922 | 12 | .078125 | BNR |
15 | 左メイン・バイト容量 No.1 | pF | 319.922 | 12 | .078125 | BNR |
16 | 左メイン補償機 | pF | 319.922 | 12 | .078125 | BNR |
17 | ロード選択 | 10,000 Lb. | 0~90000 | 1 | 10,000 | BCD |
18 | ロード選択 | 1,000 Lb. | 0~9000 | 1 | 1,000 | BCD |
19 | ロード選択 | 100 Lb. | 0~900 | 1 | 100 | BCD |
20 | 送信データなし | |||||
21 | 左メイン燃料比重 | Lb./Gal | 8,000 | 12 | .000977 | BNR |
22~42 | 右タンク用にワード1~21を反復 | |||||
43~53 | 中央タンク用にワード1~21 | |||||
54~58 | 送信データなし | |||||
59 | ロード選択 | 10,000 Lb. | 0~90000 | 1 | 10,000 | |
60 | ロード選択 | 1,000 Lb. | 0~9000 | 1 | 1,000 | BCD |
61 | ロード選択 | 100 Lb. | 0~900 | 1 | 100 | BCD |
62 | 送信データなし | |||||
63 | 中央タンク比重 | Lb./Gal | 8,000 | 12 | .000977 | BNR |
ビット指向プロトコル
Williamsburg、または「ビット指向」プロトコルは、ARINCユニット間のファイル転送用のシステムです。 元々は、ARINC 429-12規格で定義され、規格429-13、および14で拡張され、参考文書5で更に定義されました。 現在、改訂中です。規格429-11で使用される旧AIM、ファイル転送、およびメンテナンス・フォーマットの代わりに使用されるでしょう。 通常のARINCデータ・メッセージは、Williamsburgプロトコルのビット指向メッセージと混在することができます。
スタートアップ手続は、データ転送用に適切なプロトコルを決定するために使用されます。システム要素がビット指向システムを使用したいときには、可能な最新バージョンを使用してメッセージを送信します。 ハンドシェイク・プロセスは、プロトコルを送受信両システムが使用できる最低共通分母に調整します。現在、2バージョンのプロトコルが用意されています。 バージョン1は、429-12で定義され、429-13で洗練されました。バージョン2は、429-14で定義されたが、全く使用されませんでした。参考文書5は、バージョン2を削除し、新しいバージョン3を定義します。 ACARS管理ユニット(MU)と衛星データ・ユニット(SDU)の通信を容易にするため、バージョン1を再定義しています。
ソースは、一定の事前定義コードを送ることにより通信を開始します。ビット指向転送が求められる場合、最初のコード・ワードは、潜在的な受信者への“ALO”(Aloha)信号となります。 ALOワードは、システム起動直後にプロトコルをサポートするか、または何らかの理由で再初期化を実行するシステムにより送られるべきです。 シンクがビット指向データを受信できる場合、該当ユニットに送信できることをソースに知らせるために、“ALR”コードで応答します。 ソースがプロトコルを処理できるユニットに送信したい時、Request to Sendワード(RTS)を送り、Clear to Send(CTS)を受信するのを待ちます。 RTSは、確認用にCTSで反復される宛先コードとワード・カウントを含みます。CTSが正しければ、ソースはその後、ファイル転送を開始し、バージョン1に対して図8で示されるシーケンスが引き続きます。 後者のバージョンは、シンクの許可を更新する必要なく、大ファイル(最大7 LDU)を送信する機能を提供します。
図8 ファイル転送スキーム バージョン1(非Windows)
システム | SAL (OCT) |
システム | SAL (OCT) |
777キャビン・インターフォン・システム | 152 | 低速データリンク (ARINC 603) | 300 |
747 DFDR AND A330/340 SSFDR | 163 | FMC 1 | 300 |
DFDAU (強制ロード機能) | 170 | FMC 2 | 301 |
SDU #2 | 173 | DFDAU (AIDS) | 302 |
RFU | 174 | CFDIU | 303 |
HGA/HPA TOP/PORT | 175 | ACARS MU/CMU (724B, 748) | 304 |
HGA/HPA STARBOARD | 176 | WBS | 305 |
LGA/HPA | 177 | TCAS | 306 |
GPS/GNSSセンサー | 201 | SDU #1 | 307 |
MCDU 1 | 220 | キャビン通信ユニット (CTU) | 334 |
MCDU 2 | 221 | HFデータ無線/データ・ユニット #1 | 340 |
MCDU 3 | 222 | HFデータ無線/データ・ユニット #2 | 344 |
プリンタ 1 | 223 | ACESS | 360 |
プリンタ 2 | 224 | EFIS | 361 |
高速DL (ARINC 615) | 226 | エンジン表示ユニット | 365 |
MCDU 4 | 230 | キャビン・ターミナル 3 | 372 |
EIVMU 1 | 234 | キャビン・ターミナル 4 | 373 |
EIVMU 2 | 235 | キャビン・ターミナル 1 | 374 |
EIVMU 3 | 236 | キャビン・ターミナル 2 | 375 |
EIVMU 4 | 237 | OMEGA航法システム | 376 |
キャビン・ビデオ・システム (AIRSHOW) | 266 |
ファイルは、3~255ワードのサイズのLink Data Units(LDU)と呼ばれるブロック単位で転送されます。CTSの受信に続いて、ソースは、Start of Transmission(SOT)ワードで、バージョン1転送を開始します。 SOTは、ファイル・シーケンス番号、General Format Identifier(GFI)、およびLDUシーケンス番号が含まれています。データ・ワードがその後送られ、送信終了(EOT)である(最大)255番目のワードが続きます。 各LDU転送(255ワード以下)は、End of Transmissionワード(EOT)で終了します。EOTは、CRCを含み、ファイル転送全体におけるLDUの位置を識別します。 シンクは、EOT上で検証プロセスを実行し、全ての試験にパスした場合、Acknowledgment Word(ACK)を送ります。 ソースはその後、別のCTSを送り、プロセスは、最終LDUが到達確認されるまで繰り返されます。
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