歴史
背景
1950年代~1960年代のアビオニクスは、単純なスタンドアロン・システムでした。
航法、通信、航空管制、およびディスプレイは、アナログ・システムから構成されていました。
これらのシステムは、単一システムを形成するために接続された複数のボックス、 またはサブシステムからなり、システム内の各ボックスは、ポイント・トゥ・ポイント配線で
接続されていました。信号は、主にアナログ電圧、シンクロ/レゾルバ信号、およびスイッチ接点から構成されていました。
航空機内のこれらのボックスの位置は、オペレータの要求する機能、利用可能なスペース、機体重量、
およびバランスの制約がありました。より多くのシステムが追加されるほど、コックピットはより混雑し、
配線は複雑なものとなり機体の総重量は増加しました。
1960年代後半~1970年代前半までに、各システムで必要とされるブラック・ボックスの数を減らすために、
各システム間で情報を共有する必要性が生じました。例えば、方向、および速度情報を提供する単一センサーは、
航法システム、兵器システム、航空管制システム、およびパイロットのディスプレイ・システムに該当データを提供しました(図1A参照)。
図1A システムの構造
しかし、アビオニクス技術はまだ基本的にはアナログであり、共有センサーは、ブラック・ボックスの総数を減少させたが、 配線やコネクタの「ネズミの巣」となりました。
デジタル技術の到来
1970年代後半までに、デジタル技術の時代が到来しました。デジタルはアナログと比較して、コンピュータ能力を増大させました。しかし、 送受信システムからのデータ信号、出入力は、なおアナログのままでした。このことは、複雑で高価なA/D、 およびD/A変換器を介して他のシステム、およびサブシステムに連結するのに少数のホスト・コンピュータ(一般的に1、または2台のみ)の構成につながりました。
技術の進歩により、アビオニクス・システムはデジタルが多くなりました。このデジタル技術の利点は、 アナログ信号数の減少による変換の必要性の減少でした。デジタル形式でのユーザー間のデータの伝送は、 センサー情報のより大きな共有を提供することができました。追加の利点は、アナログ・データが単方向で送信されたのに対し、 デジタル・データは双方向で送信できたことでした。データのシリアル伝送が、パラレル伝送と比べ、 航空機とブラック・ボックスに要求される受信/駆動回路内の配線数を減少させるために使用されました。
データ・バス
しかし、これだけではまだ不十分でした。全てのシステム、およびサブシステムが単一かつ共通の配線を共有することを可能にするデータ伝送媒体が必要とされました(図1B参照)。 この相互接続の使用を共有することにより、各種サブシステムは、順に定義されたシーケンスで、相互間、他のシステム、およびサブシステム、データ・バスにデータを送ることができました。
図1B システムの構造
MIL-STD-1553Bは、「合成パルスの連続を形成するために時間がずらされた、差分信号サンプルを有する1つの通信システムを通した複数の信号源からの情報の送信」として、 時分割多重(TDM)方式の用語を定義します。図1Bの例では、これは、時分割で行われる異なるアビオニクス・ボックス間の通信で、 データが単一伝送媒体を介して複数のアビオニクス・ユニット間で転送することができることを意味します。
歴史
1968年、軍事、および産業の技術団体であるSociety of Automotive Engineers(SAE)は、軍事アビオニクス共同体の需要に応えるシリアル・データ・バスを定義するために小委員会を設立しました。 A2-Kとして知られるこの小委員会は、1970年に文書の最初のドラフトを立案しました。3年間におよぶ軍と政府の再検討と修正により、1973年8月にMIL-STD-1553(USAF)がリリースされました。 最初の規格の主要ユーザーは、F-16でした。
更なる修正と改善が行われ、三軍バージョンのMIL-STD-1553Aが1975年にリリースされました。規格の“A”バージョンの最初のユーザーは、空軍のF-16と陸軍の新攻撃ヘリAH-64Aアパッチでした。
いくつかの「実世界」の経験と共に、間もなく、更なる定義と追加の機能が必要とされたことに気づきました。 SAEは、1553Bを生み出すために3年間の集中した努力を費やし、1978年にリリースしました。当時、政府は、コンポーネントの製造業者が製品を開発するのを可能にし、 なされるべき次の変更は何かを決定する前に、産業界が追加の「実世界」の経験を積むことができるように、規格を“B”レベルで「凍結」することに決定しました。
Notice1とNotice2
今日、1553規格は、“B”レベルのままですが、修正は行われています。1980年、空軍は附属書1を導入しました。 空軍の用途のみを目的としたNotice1は、規格内のオプションの多くの使用を制限しました。 SAEは、Notice2を立案するために、委員会の作業で再び3年以上を費やしました。
1986年にリリースされた三軍Notice2(Notice1を代替)は、規格内のオプションに対する定義をより確固たるものにしています。 そして、オプションの使用を制限することなく、オプションが実装された場合、どう使用されるべきかを厳密に定義しています。 Notice2はまた、運用特性の共通セットを獲得するために、ブラック・ボックスの設計に対する最小限の要求も配置しています。
MIL-STD-1553の応用
導入以来、MIL-STD-1553は、数多くのアプリケーションで使用されています。規格のNotice2は、その使用を制限しないために、 「航空機」、または「機上」への全て参照を削除しました。
応用例として、衛星、並びにスペースシャトル内のペイロード(国際宇宙ステーション上で使用されています)に適用されており、 軍事用途が最も数多く広範囲に渡っています。大型輸送機、空中給油機、および爆撃機、戦術戦闘機、およびヘリに採用されています。 これは、ミサイル内にすら含まれ、いくつかの実例では、航空機とミサイル間の主要インターフェイスとして役立っています。 海軍は、水上、および潜水艦艇にデータ・バスを応用しています。陸軍は、ヘリに加えて、戦車と榴弾砲に1553を導入しています。 商業アプリケーションでは、地下鉄、例えば、湾岸地域高速鉄道(BART)、および生産ラインを含むシステムに規格を応用しています。
MIL-STD-1553Bは、NATO、および多くの外国政府にも採用され、実施されています。 イギリスは、Def Stan 00-18 (Part 2)を発行し、NATOは、STANAG 3838 AVSを発行しており、両方共に、MIL-STD-1553Bの亜種です。
MIL-STD-1553Bの広範囲な採用とアプリケーションは、他の標準化活動の発展も促進しています。 MIL-STD-1773は、1553Bの光ファイバー版です。そして、MIL-STD-1760A, the Aircraft/Store Interconnectは、その中に1553Bを組み込んでいます。
MIL-STD-1553の定義
MIL-STD-1553Bの特性の概要は、以下の通りです。
データ・レート | 1 MHz |
ワード長 | 20 bit |
データ・ビット/ワード | 16 bit |
メッセージ長 | 最大32データ・ワード |
送信技術 | 半二重 |
動作 | 非同期 |
エンコード | 二相マンチェスターII |
プロトコル | コマンド/レスポンス |
バス・コントローラ | シングル、またはマルチプル |
フォールト・トレランス | 一般的に二重冗長、2つ目のバスは「ホットバックアップ」状態 |
メッセージ・フォーマット | バス・コントローラから、リモート・ターミナル ターミナルから、バス・コントローラ リモート・ターミナルから、リモート・ターミナル ブロードキャストシステム制御 |
リモート・ターミナル数 | 最大31 |
ターミナル・タイプ | リモート・ターミナル バス・コントローラ バス・モニタ |
伝送媒体 | ツイスト・シールド・ペア |
接続 | 変圧器と直接 |
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