バーチャルリンク
エンドシステムの100 Mbpsリンクは、多重バーチャル・リンクをサポートできます。これらのバーチャル・リンクは、100 Mbps帯域幅の物理リンクを共有します。 図19は、単一の100 Mbps物理リンクにより運ばれている3つのバーチャル・リンクを示しています。図は、AFDXポート1、2、および3に送信されたメッセージがバーチャル・リンク1により運ばれることを示しています。 AFDXポート6と7に送信されたメッセージは、バーチャル・リンク2により運ばれ、AFDXポート4、および5上に送信されたメッセージは、バーチャル・リンク3により運ばれます。
図19 物理リンクにより運ばれる3つのバーチャル・リンク
アビオニクス・サブシステムを別のものから分離するために、パーティションが使用され、類似メカニズムは、あるバーチャル・リンク上のトラフィックと同じ物理リンクを使用する他のバーチャル・リンク上のトラフィックとの干渉を避けるために、 個別のバーチャル・リンクを分離することが要求されます。これは、イーサネット・フレームがバーチャル・リンク上で送信できる速度を制限し、バーチャル・リンク上で送信できるイーサネット・フレームのサイズを制限することにより行われます。
各バーチャル・リンクには、2つのパラメータが割り当てられます。
- 帯域幅割当ギャップ(BAG):1~128 msecの2のべき乗範囲の値
- Lmax:バーチャル・リンク上で転送できる最大イーサネット・フレーム、バイト単位
BAGは、バーチャル・リンク上を送信されるイーサネット・フレーム間のms単位における最小間隔を表します。 例えば、VLID 1を持つバーチャル・リンクが32 msのBAGを持つ場合、 イーサネット・パケットは、VLID 1上で32 ms毎に1パケットより早く送信されることはありません。 VLID 1が200バイトのLmaxを持つ場合、VLID 1上の最大帯域幅は、50,000ビット/s(200×8×1000/32)です。以下の表は、BAGと通信周波数に対して許容可能な値を示します。
BAG (ms) | Hz |
1 | 1000 |
2 | 500 |
4 | 250 |
8 | 125 |
16 | 62.5 |
32 | 31.25 |
64 | 15.625 |
128 | 7.8125 |
バーチャル・リンクに対するBAGとLmaxの選定
特定のバーチャル・リンクに対するBAGの選定は、バーチャル・リンクによりリンク・レベルの転送が提供されているAFDXポートの要求に依存します。 例えば、アビオニクス・サブシステムが同じバーチャル・リンクにより運ばれている3つのAFDX通信ポート上でメッセージを送っていると仮定します。 ポート上のメッセージ周波数が、各々10 Hz、20 Hz、および40 Hzであると仮定します。合成メッセージ(同じバーチャル・リンク上で合成される)の総周波数は、70 Hzです。 メッセージ送信の平均時間は、14.4 msです。従って、バーチャル・リンク上に適切な帯域幅を提供するためには、14.4 msより小さいBAGを選定する必要があります。最初の利用できるBAGは、8 msであり、125 Hzに一致します。 8 msのBAGでは、バーチャル・リンクが遅滞なく3ポートから合成メッセージを転送できることが保証されます。
送信元エンドシステムは、各出力バーチャル・リンクに対するBAG制限を強化するために要求されます。バーチャル・リンク・スケジューリング・アルゴリズムの数は、エンドシステムにより使用することができます。
Lmaxは、バーチャル・リンク上のこれらのポートにより送信されるべき最大イーサネット・フレームを調整するために選択します。
バーチャル・リンク・スケジューリング
各送信AFDX通信ポートは、バーチャル・リンクと関連しています。通信ポートに送信されたメッセージは、UDP、IP、およびイーサネット・ヘッダ内にカプセル化され、 送信用の適切なバーチャル・リンク・キュー内に配置されます。バーチャル・リンク・キューにおけるイーサネット・フレームの送信は、エンドシステムのバーチャル・リンク・スケジューラによりスケジュールされます。 バーチャル・リンク・スケジューラは、このエンドシステムから発する全てのバーチャル・リンクの送信のスケジューリングを担当します。
図20に、バーチャル・リンク・スケジューリングのシナリオを示します。バーチャル・リンク・スケジューラは、各バーチャル・リンクがその割り当てられた帯域幅制限に一致することを保証する責任があります。 バーチャル・リンク・スケジューラは、各バーチャル・リンクに対するBAGとLmax制限を保証しなければならないだけではなく、多重化により導入されるジッタ量が許容範囲内になるように、バーチャル・リンク送信の全ての多重化も担当します。
図20 バーチャル・リンク・スケジューリング
AFDX通信ポートに送信されるメッセージのタイミングは、アビオニクス・サブシステムと接続された各種デバイスの要求により制御されます。例えば、センサは、10 Hzの速度で測定値を送信することができます。 ジッタは、メッセージが空でないバーチャル・リンク・キューに到着する場合に導入されます。同様に、全てのバーチャル・リンク・キューの冗長性管理ユニットへの多重化と、物理リンク上の事後の送信は、追加ジッタを導入することができます。
ARINC 664仕様は、送信において、エンドシステムの出力での各バーチャル・リンク上の最大許容ジッタが、以下の両数式に準拠していることを要求しています。
Nbwは、リンクの帯域幅(100 Mbps)です。最初の数式は、他のバーチャル・リンクの各々からのフレームにより遅延されているイーサネット・フレームから発生するジッタ上のバウンドを表現します。 2番目の数式は、バーチャル・リンクの数に依存しないハード面の制限です。これらの要求は、AFDXネットワークの全体的な「決定論」を示す必要があります。
フレームが送信用のバーチャル・リンク・キューから選択されれば、VL毎のシーケンス番号が割り当てられ、フレームは、複製(必要な場合)と物理リンク上の送信用の冗長管理ユニットに送信されます。 シーケンス番号は、サブVL機構のため、実際のバーチャル・リンクのスケジューリングよりも早く、AFDXフレームに割り当てられません。 バーチャル・リンクが1つを超えるサブVLを持っている場合、シーケンス番号は、送信用のバーチャル・リンク・スケジューラにより実際に選択されるまで、AFDXフレームに割り当てることができません。
図21 バーチャル・リンク・スケジューリング
図21は、3つのサブVLを持つバーチャル・リンクを示します。バーチャル・リンク・スケジューラは、スケジューリングの目的のために、これらのサブVLを単一のバーチャル・リンクとして取り扱います。 しかしながら、パケットは、ラウンドロビン方式でサブVLキューから送信用に選択されます。明らかに、シーケンス番号は、バーチャル・リンク・スケジューラにより送信用に実際に選択されるまで、サブVLキュー内のパケットに割り当てることができません。 単一のサブVLしかない(普通の場合)場合、シーケンス番号は、イーサネット・フレームがバーチャル・リンク・キューに挿入されると、割り当てることができます。
ジッタ
バーチャル・リンク・スケジューリングは、パケット調整と多重化の2つの構成要素から構成されています。
図22は、0ジッタ出力ストリームを作成するために、バーチャル・リンク・キューからのフレームの整調におけるバーチャル・リンク調整機の役割を示しています。 バーチャル・リンク・スケジューラは、物理リンク上での複製、および送信のために、冗長性管理ユニットへの調整機出力の多重化も担当します。
図22 バーチャル・リンク調整の役割
調整機の出力は、イーサネット・フレームの調整ストリームから構成されています。ジッタは、調整機出力がバーチャル・リンク・スケジューラMUXにより組み合わさるときに導入されます。 MUXに入力で同時に到着するイーサネット・フレームは、キューイング遅延(ジッタ)を経るでしょう。
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